大規模なデビューを予定していた「オリンピックeスポーツ大会」構想は、正式に中断された。両者は協力関係を解消することで合意した。しかし、この外交的な言葉の裏には、今後何年にもわたってオリンピック運動のeスポーツ分野の未来を左右しかねない、より深い利害の対立が隠されている。
展開:高い期待と最初の亀裂
2024年に国際オリンピック委員会(IOC)がサウジアラビアのオリンピック・パラリンピック委員会(SOPC)との提携を発表したとき、「オリンピックeスポーツ大会」プロジェクトは歴史的な節目のように見えた。計画では、伝統的なオリンピックの価値観とデジタルスポーツの新しい形を融合させた12年間の協力関係を構想していた。サウジアラビアは、この取り組みの中心拠点として、自国のeスポーツエコシステムとメディアインフラに数十億ドルを投資する予定だった。
しかし、わずか1年後、戦略的に見えたこの同盟は正式に崩壊した。IOCとサウジ政府は、「オリンピックeスポーツ大会に関する協力を相互の合意により終了する」と発表した。
何が起きたのか
IOCの公式声明では、両者が「それぞれ独自のeスポーツ計画を保持し、今後は別々に進める」と強調された。この表現は穏やかに聞こえるが、実際には、2027年以前に開催が予定されていた第1回大会の準備が完全に停止したことを意味している。
同時に、内部情報によると、この決定は8月にはすでに形成されていたという。そのきっかけは、サウジ支援の団体「eスポーツ・ワールドカップ財団」が「eスポーツ・ネーションズカップ」の創設を発表したことにあった。この新しい国家対抗トーナメントは、オリンピックeスポーツ大会の代替となるグローバルな大会として紹介されたが、オリンピック構造とは直接の関連を持たなかった。
こうして決裂に至った理由
パートナーシップ内の緊張は徐々に高まっていた。2025年初頭、IOCはオリンピックeスポーツ大会の開始を少なくとも2年間延期し、2027年まで延期することを発表した。公式の理由は「より深い計画が必要である」というものであったが、欧州のeスポーツ関係者によると、対立は根本的な運営権に関する問題まで及んでいた。つまり、「誰が運営を統括するのか」「誰が競技種目を選ぶのか」「国際eスポーツ連盟を関与させるのか」という点である。
最大の障害は、連盟の統制権に関する問題であった。IOCは、オリンピックの透明性基準を維持するために、国際eスポーツ連盟(IESF)やグローバルeスポーツ連盟(GEF)などの国際機関との協力を求めた。これに対し、サウジ側は反対した。なぜなら、これらの組織はいずれもゲームコンテンツの知的財産権を保有しておらず、また財務面での評判も不透明だったからである。
当初の計画では、サウジアラビアは将来の大会の形式と規則を監督する独自の連盟を設立する予定であった。このモデルはIOCの旧指導部の下で承認されていたが、大統領の交代後、委員会の方針は大きく変わった。
Game Over: The International Olympic Committee (@iocmedia) and the Saudi Arabian government have mutually agreed to kill the 12-year contract for the Esports Olympic Games. We dive into why this happened, with the help of multiple sources.
✍🏼 @jfudge https://t.co/yh5W2AMaZK pic.twitter.com/skUbVWcwVW
— The Esports Advocate (@TEAdvocated) October 30, 2025
内部要因:政治・ジェンダー・統制
新しいIOC執行部は、パートナーからの政治的影響に対してより厳しい立場を取った。最近の交渉で議論された文書では、「民主的な統治」「平等な代表」「ジェンダーバランス」といった原則を競技運営組織に重視するよう求めていた。関係者によれば、サウジ側は特に女性の指導的役割への参加や、参加国構成の規制に関して、こうした条件を受け入れる準備ができていなかったという。
並行して経済的な対立も激化していた。IOCはこの取り組みを世界的なプロジェクトとして位置づけ、地域限定と見なされることを避けたかったのに対し、サウジアラビアは「ビジョン2030」戦略の一環としてリヤドを中心に据える方針を取っていた。
今後の展開
国際オリンピック委員会は、新たなパートナーシップモデルとeスポーツ競技の新しい構想を策定中であると発表した。IOCは、コミュニティからの意見を取り入れ、「eスポーツをオリンピック運動に統合するアプローチを再考する」ことを目指している。
一方、サウジ側は自国のプロジェクトに注力する予定だ。特に「eスポーツ・ネーションズカップ」や「eスポーツ・ワールドカップ」シリーズは、地域の旗艦的イベントとなる見込みである。
専門家によれば、IOCはシンガポールや韓国といった、長年にわたりスポーツ的な形式でeスポーツを推進してきた他の国際的パートナーと協力して、この構想を復活させる可能性があるという。
意味するもの
IOCとサウジアラビアの決裂は、単なる契約の終了ではない。それは、eスポーツという競技の未来をめぐる主導権争いを意味している。サウジの戦略は、中央集権的で投資主導型のモデルに基づいているのに対し、IOCはオリンピック運動を特徴づける倫理的および統治的基準を維持しようとしている。
短期的には、この対立は「統一されたオリンピックeスポーツエコシステム」の創設を遅らせるだろう。しかし長期的には、主要な地域が単に競技そのものだけでなく、産業全体の未来を形作る権利をめぐって競い合う、より均衡の取れた多極的なモデルの誕生につながる可能性がある。
 
         
        
 
         
		 
             
             
            